ではひとつ

カタタタタ、タン。
キーを叩く音。
その音が止まると同時に、何もない空間が揺らめいた。

揺らぎが収まった後、一人の男がそこにいた。
青みがかった淡い銀の髪。透き通る水色の瞳。
文字を呪文の代わりとした召喚は成功した。
女は満足げに微笑んだ。

「やぁｗ　久しぶりだね」
『俺を名指しで呼び出すなんて誰かと思えば…あんたか』
「そう。私だよ」
『なんの用だ？』
「いやなに、昔話でもしようかと思ってね」
『昔話？』
「そう。某国王や鰐さんの話題に感化されてね（くすくす」
『まぁ、何でも良いが』
「そうそう、何でも良いの。思いつきなんだからｗ」
『ではなんの話を？』
「そうね。世界的な大きな動きとして、君が思い浮かぶものは何？」
『俺が？　…そうだな。初めての呪竜祭…ゼロスパイア…冥界軍…粛清…ああ、粛清と言えば、ＰＯＮの設立･瓦解も世界への影響は大きかったな』
「そうね、ＰＯＮはいろんな意味で大きい国だった」
『それでも語るか？』
「ちょっと長くなりすぎるし…君的に都合の悪いこともあるんじゃないの？」
『否定はしない』
「じゃあやめておこう」
『そうだな。それに今日はもう時間もない。今度また機会があれば…ふむ…ゼロスパイアのことでも話すか。昔過ぎてよく覚えていないが…』
「ああ、その点は多分大丈夫じゃないかな、ちょうど良い資料館があるし」
『そういえば、あれはよくできていたな。少々資料が膨大すぎて、読み進めるのに苦労はするが…』
「それもそうね…（苦笑）　…まぁ、それではまた次回に…色々と頼むよ」
『面倒だが、たまにはそういうのも悪くはないだろう。了解した』
「じゃ…またね」
『ああ、また』



カタタン。
キーが心地よい音を立てる。
そして女は一人に戻った…。