再度の

キーを叩く音が響く。
2度目の、文字による召喚。

彼は再び、呼び掛けに応じ現れた。
漆黒の髪を揺らし、女はキーから指を離す。

「やあ。来てくれたね」
『約束だったからな』
「君が律儀でいてくれて嬉しいよ」
『めんどくさいが仕方ない。…で？　えーと、ゼロスパイアだったな』
「そだねー。それをお願いするよ」

『かなり古いからなぁ…5年は前か』
「ああ、もうそんなにたつんだ？」
『資料によると、そうらしいな』
「おぼえてないんかい」
『しかたねぇだろ。俺はほとんど動いてなかったし。あいつが…ああいう時期だったしな』
「ああいう…？　……ああ、そうか。なるほど…あれじゃ君も動けないな」
『まぁそういうことで、資料を基に覚えてることだけ並べるぞ。あやふやなものもあるから、そういうのがイヤなら席を立て』
「んー、とりあえず話してみてもらえるかな？」
『ちっ。しゃーねぇな。うんざりしても知らねーぞ』

2003/12/24　ゼロスパイアによる降伏勧告スレがたつ。

『ああ、これは覚えてるな。最初は、こいつなにトチ狂ったこと言ってるんだと思った。一般仕官者だと思っていたからなぁ…それまでイベントキャラが発言するのを見たことなかったし』
「そりゃまぁそうだろうねぇ」
『実はその後のことは良く覚えてない。どうやってイベントと知ったのか…』
「まぁ、資料見ながらゆっくり色々思い出してみてよ」
『了解』

2003.12/25　旧天魔勢力による呪竜祭り「忘年会」の始まり。
主攻撃対象のバルハラにアジトと天空の神殿配置。

『天魔…』
「また懐かしい。ＰＯＮ以前の話だね」
『……ああ、あんたもまたとんでもないことになってたもんな。覚えてないか？』
「何を？」
『いや……。まぁ…この時期、じつはゼロスパイアどころじゃなかったんだよな』
「ふぅん？」
『当時俺たちがいた国では、ゼロスパイア色は薄かった気がする。表立った情報しか降りてなかったのもあったし』
「では、裏の情報は？」
『それも語るのか？』
「いやなら強制はしないけど」
『…対外勢力に絞れば、正直呪竜の方が要注意だった。さっきも出たが、旧天魔と…活発だったのはＳあたりか』
「なるほど」
『そんなこんなで…ゼロスパイアに注目し出したのはもっと後だったんじゃないかな』
「あいまいね」
『言ったろう。それどころではなかったと。ゼロスパイア関連は確かに警戒されていたが、できるだけ関わらずに行く。それがスタンスだった』
「全世界的に？」
『いや、そうでもないな。降伏勧告の期限は1月15日。この時点までに、降伏か否かの内容を問わず、単に反応を返した国として見れば、全国家の半数ほどあったそうだ』
「君たちがいた国は？」
『返していない』
「それでよかったの？」
『良かったかどうかはわからない。けれど極力避けていた』
「なんかつまらなくない？」
『まぁそうかもしれない。話すのはここまででやめておくか？』
「うーん。ここまで来たら、一応全部聞いてみるわ」

2004/01/15　ゼロスパイア、一旦姿を消す。
2004/01/16　97番目の国「聖神ゼロアース」として戻ってくる。

『ん？　なんだこれ…』
「聖神ゼロアースという国の国王となって戻ってきたってこと？」
『ああそうか、それまでは国とかなくてヒロみたいに個人宅にいたってことか』
「色々飛んでるわね、記憶」
『そうだな。俺も何でこんなこと語ろうなんて思ったんだか…』
「まぁいいじゃない。続きは？」
『ん。この時点で、降伏勧告で降伏に応じちまった国は6カ国あったようだな。だが、これは本来、国民の意思ではなかったらしい』
「どういうこと？」
『少し前に呪竜により国を奪われた国が複数あった。降伏を選択した国のほとんどがこの国だったらしい』
「国に根ざさない王が降伏を選んだと…？　ええっと、降伏したらどうなるの？」
『ゼロスパイアの手駒の奴隷として扱われる。国王は奴隷長と呼ばれ、国名も変えられてしまう。友好/非友好等の設定も勝手に変えられてしまったようだな。戦いたくなくとも戦わねばならない状態に追い込まれる。そして…資料に記載されているものを信じるならば…』

・浄化すべき地の報告（攻撃対象の選択）
・国コメント欄の変更要求（ゼロアース及ゼロスパイアへの忠誠の記載）
・言論規制（奴隷という立場からの侮辱･反論は許さない）

『これが義務として投げ入れられたらしい』
「なんとも、まぁ……」
『翌日、攻撃対象の報告期限が20日だと、聖神ゼロアース国の王宮メッセに出る。その他細々としたものも出てたな』
「こまごま？」
『ああ。めんどくさいんでその辺は省略だ。ちなみに追記しておくと、さらにこの2日後の19日、呪竜の仕様変更が発表されている。呪力注入が必要になったのはこのタイミングなんだな。実装は26日らしいが』
「呪竜に邪魔されたくなかったのかもしれないわね」
『さぁ、そのへんはわからんが。さて、そんなこんなで時間は流れ、報告期限の20日になった』
「烙印国は本当に報告したのかな」
『報告帰還は、烙印国に考える時間を与えた。それは奴隷としての報告以外のことも考えさせるに十分な時間だったんだろう。そして烙印は…その国の意思で解除することもできるシステムだったんだ』
「じゃ、みんな解除した？」
『簡単に決心がつくものでもなかったろうさ。烙印は解除してもその痕が残る仕組みだった。そして、烙印を消した国は、何よりも罪深い国として扱うと公言されていた。自国を愛すればこそ、悩んだと思うが…将来を見越すならばどうすればいいかは…わかっていただろう』

2004/01/20　マリアンルージュ、烙印を解除。

『期限のその日、ＭＲが出した応えはこれだった。これにより奴隷としての義務を逃れられたようだな』
「他の国はどうなったの」
『残念ながら…21日、解除しなかった烙印国はいっせいにメイマイに攻撃を開始したらしい』
「…そう…」
『だが…当時メイマイのいた東方同盟は大きな勢力だった。しっかりとした築城支援に支えられ、城壁にも特に問題はなかった。このまま起伏なく持久戦かとも思ったが…』
「ということは、違ったと」
『そういうことだ』