君は夢を紡ぐ

ライラを抱えて、ぼんやりと月を見上げる。
勢いをなくした草が目の前でそよいでいても、ライラはただ黙って抱かれるままでいてくれた。

さっき、会議室に出立の挨拶をしてきた。
日が昇り、いつもの行動を繰り返したら、夜には旅立つ。
本当は昨日に…と思っていたのだけど、挨拶をし忘れてたから、1日ずれてしまった。
10月には次の国に行くと約束しているから、もうタイムリミット。
今度はちゃんと挨拶したし、ある程度余裕を持って行動しなくては。

こうやってまた、次の国へ行く。
その次の国ももうめぼしはつけてある。
そうして溜まっていくデータたち。

これがどう生かされるかなんて知らない。
全てが同じ状態で取得されたわけじゃないから、役に立つかどうかもわからない。
それでも。
時間はただ無情に過ぎ行くから、負けないように歩かないと。

今腕の中にいるライラと…新しく加わった、リナ・ルナ・レナ。
大切な、かわいい仲間たち。
リュークのように喋れたりはしないけど、それでもそばにいてくれる。
ロストという保護者兼同行者もいる。
それなりに満足な旅路。

これはいつまで続くかな。
いつまで続けようと思うかな。

帰る場所はただひとつ。
ホームシックは相変わらずだけど。
それでもまだ、やりたいことが勝る今。
もう少しだけこの旅は続くだろう。
終わりが見えない旅だけど。
もしかしたらすぐ終わるかもしれないけど。

続けるならば、楽しまなくては。
そこに楽しみがないのならば、この旅に意味はない。

意味があるうちに。
どれだけの国を回れるかな…。

「ねぇ、ライラ。お前もホームシック？」

聞いても答えは返らない。
ただ僅かに首をかしげて、方耳を動かしただけ。
いつものしぐさ。
否定とも肯定とも取れる…いや、その前に理解しているかどうかさえ不明だけれど。

「もう少しだけ続けさせてね」

いろんなことが、この胸にある。
やりたいことは尽きない。
もう少しだけ、この夢を見続けていたい。