ウサギ

国を出ると伝えたその日、届いたのは一匹の白兎だった。
レイが連れ帰ったそのウサギを見て、ロストは軽く目を見張る。

「どうしたんだ、それは」

問いかけにレイは笑った。

「うん、私がウサギ好きだって知ってる人がね。出奔のご挨拶にって、くれたの。可愛いでしょう？」
「そりゃ…可愛いが…」

純白の体毛、真紅の瞳。
それは何かを彷彿とさせた。

「…レイに似てるかもな。色とか…」

ほんとはもっと似てる存在がいたけれど。
それでも、銀の髪に真紅の瞳のレイとも、確かに色彩だけなら似ているだろう。

「それでかな。動物では一番うさぎが好きだよ。特に白っ」

ウサギを抱きしめるレイは本当に嬉しそうにそう言った。
ロストは苦笑し、ウサギの頭を撫でる。
どうやら今日から、このウサギが家族の一員として加わるようだ。

「名前、付けないとなぁ」

一緒に暮らすなら、名前がなくては不便だ。
特にこの家には、ペットとしてリュークがいる。
しっかりとした区別は必要だろう。

「名前…うーん、なんにしよう？　白いから…白ちゃんとか？」
「いや、それは…さすがに…」

少しだけ悩んで、あることに気付いたロストは、ちょうどいい口実を思いつく。

「レイ、ロスト、リューク。だったら、ラのつく名前かルのつく名前なんてどうだ？」
「あ、いいかも…じゃあ…ラミカ、ライラ、ラーナ、ラルフィ…」

適当な名前を並べるレイに、ロストは頷く。

「ライラなんかかわいいかもな」
「そう？　じゃあ、それにしよう。リュークにも聞きたかったけど、今日も預けっぱなしなんだよね」

恥ずかしそうにレイが笑う。
そりゃそうだろう。
イヌオウに預けるということは、世話をまかせっきりということだ。

「いい加減、リュークに愛想つかれるぞ…」
「うー…」
「たまには戻してやれ」
「だって呼べば来てくれるもん。それに、あそこにいるの本人の意思だし」
「ああ、そういえばそうだったか」

たわいない会話。
それを楽しみながら、ロストは新しく家族となったウサギを見る。
その目を優しく和ませながら。