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カタリ。
小さな音を立てて、宝石箱を開く。
箱の中には、宝石の代わりに、エレメントがふたつ。
薄青く冴えた輝きを放つ『月』。
白銀の清冽な煌きを放つ『雪』。
少し前、夜の海を見ようと、プレリハイムへ出かけた。
どこまでも続く海と、それを照らす月。
カーシャの冷たい夜風に身を任せているとき、不意に飛び込んできたのが月のエレメントだった。
目の前で輝きながら空中に静止する、結晶化した月の要素――エレメント。
そっと手を伸ばすと、それは待っていたかのように手のひらに落ちた。
どうやらこの付近はエレメントが出現しやすいらしい。
帰宅後、レイはエレメントをリュークに見せて、先ほど起きた事実を語った。
リュークは少しだけ考え込み、首をかしげた。
「なんかそれがあると、少しだけレイの魔力が上がってる気がするわね」
思っても見なかったことを言われた。
懐かしく暖かい『何か』をエレメントに感じてはいるが、自分が変化しているとは思わなかった。
「魔力…が…?」
思わず自分の手を見てみるが、そこに何か変化したような痕跡は見つからない。
けれど魔法全般の師でもあるリュークが言うのならば、そうなのかもしれない。
戸惑うレイをよそに、リュークはさらに考え込む。
「月…か……。そっか、彼女が…」
「リューク?」
「ううん、なんでもない。でも…うん、そうね、レイ」
考えながら言葉を選ぶ。
「これは月の属だけど…あと、水と雪、集めてきてこれるかな。必ずレイの役に立つはずだから」
水はレイの属性。
そして雪や氷は、レイを育てたカーシャという土地を包む水。
そのどちらもレイに力を与えるだろう。
リュークはそう確信し、時間のあるときはプレリハイムへと出かけるよう指示した。
しかし。
その後レイが持ち帰るエレメントは、『風』が多かった。
それに次いで、『闇』と『悪夢』。
なんと皮肉なことか…リュークは眉を顰める。
風も闇も悪夢も…そのすべにリュークは心当たりがあった。
それはある意味必然だったのかもしれない。
レイの『核』となった存在の最期…。それがこんな形で影響するとは。
しばらくしてまた『月』を手に入れたレイは、『水』や『雪』を取れないことを、単に運が悪いだけと考えていた。
リュークも表向きそれに賛同し、不要のエレメントは全て世界へと戻した。
そのまま時か流れる。
いまだに欲しいエレメントは手に入らない。
そんなある日、レイの元へある少女が訪れた。
レイと同じ水の精霊――正確にはそれぞれ違うのだが――の少女、翠波。
「こんばんは」
その笑顔は、見るものを安心させる優しさに溢れている。
「わぁ、翠波さんいらっしゃい♪」
弾む声でレイは彼女を招き入れる。
外見上はレイより年下に見えるが、レイにとっては目標の一人。
いつか追いつき肩を並べたいと願う相手だ。
二人のゆったりとした関係は、けれど実はとんでもないレイの勘違いから始まった。
驚くほどのタイミングで発生した、偶然の一致。
それにより誤解したレイは、無関係とも知らず謝罪のために彼女の家に突撃した。
無意味に相手を慌てさせて始まった、あのきっかけは思い出しても恥ずかしい事実だが……逆に言えば、その勘違いがあったからこそ直接会話することができた。
それを考えると、あのタイミングでの偶然は、運命が用意したものかもしれない。
「今日はこれをお渡ししようと思って…」
そう言って彼女が取り出したのは、何度もプレリハイムへと探しに出かけたエレメントのひとつ、『雪』だった。
レイが以前、探しているといっていたことを覚えていてくれたらしい。
「え…本当に頂いていいんですか?」
問いに彼女は微笑んで頷いた。
突然目の前に現れた『雪』に、レイは驚くと共にとても喜んだ。
「ありがとうございます…翠波さん」
『雪』を手に入れたことはもちろん、それを気にかけ、わざわざ届けてくれたこと。
その心が何より嬉しかった
『月』は自分で手に入れた。
『雪』は友人から頂いた。
けれど結局。
この後、何度か探しにいったものの、『水』のエレメントを手に入れることはできなかった。
宝石箱の中で輝く、ふたつのエレメント。
意識を向けると、それらはふわりと浮かび上がり、レイの周囲をゆったりと飛び回った。
満月に近い月光を受け、儚く澄んだ光を散らしながら。
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貴方は 人目のお客様
誕生日:08/12/01
HP:水夢 -水の見る夢-
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-NPC-
うさぎ:ライラ、リナ、ルナ、レナ、ロビン
保護者:ロスト
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