月のない夜

その日、レイは重い足取りで帰宅した。
身を投げ出すように寝台へ横たわる。

「これで…よかったのかな…」

自分の選択は。
選びとった道は。

仲間。
やがて敵に回ることが判っている…けれど、今は共に戦う、仲間。
その心を裏切らないために……選んだものは。

…本当に正しかった？

考えてみる。
あの状況。あの情報。
手にしたものを、確認して。
もう一度選択のチャンスがあったとして。
…別の道を選ぶか？

選べるわけがない。

練習試合。
正式な戦いではないけれど。

それでもそこから…何かを、学べるはずだ。
だったら。
学ぶのは、心がいい。
仲間のために頑張れる心を。
たとえ自分たちが危機に陥ったとしても、協力し合える心を。

道を探した。
今進むべき道を。
だから…レイは頭を下げて、協力を願う。
共に戦う仲間を助けてくれと。
やがて敵に回る相手だとしても。
今は確かに仲間なのだと…。

もしかしたら、下らないこだわりに見えるかもしれない。
意味のないことをしてると思うかもしれない。
それはただの練習。
試合という形式をとっているけれど、ただのゲームでしかないのだから。

それでも…。



寝台に横たわったまま、窓向こうの夜空を眺める。
今日は新月。
月のない夜。
あの白銀の煌きは、今日は見れない。
それでも、光がないわけではない。

小さな星々が煌きながら、夜空を飾っている。
星に願いを。
自分の心に、かっこつけられるように。

だって、ねぇ。
どんなときでも、たとえそれが練習試合というゲームでも。
皆で楽しもうという気持ちがあれば、そのために何かできるはずだもの。

そう思って、レイは瞳を閉じる。

こんな自分にできる、精一杯のことを…この静かな夜に…。