桜霞

薄紅に染まる視界
舞い散る花吹雪
伸ばしたこの手は
お前の手に届かなかった

俺の手を擦り抜けて
消えてしまったお前に
もう聞くことは叶わない

幸せだったか
満たされていたか
不安な思いはなかったか

俺はお前の望む愛を
正しく与えてられいただろうか

いや、そうじゃない
俺の思いは
正しく伝わっていただろうか

身分も種族も
全て乗り越えようとして
結局お前は消えてしまった

お前は俺に不満を持っていたのか
だから俺の前から消えたのか

桜霞の向こうへ
俺の手の届かない場所へ

薄紅の花びらは
吹雪となって俺の目をふさぐ
お前の姿を隠してしまう

もう一度
もう一度だけ
せめてこの手を



けれどお前はいない



俺の正体を知ったとき
お前はお前の意思で
この手を擦り抜けた

あれは拒絶だったのだろうか
それとも…

種族の違い
それはそんなにも大きかったか
身分の違い
それはそんなにも重荷だったか

それとも
お前は俺に愛想をつかしたのか

俺が思うほどに
お前は俺を愛してはいなかったのか
この焼け付くような痛みを
お前は抱えてはいなかったのか

問うべきお前はもういない

遠い昔の
遠い世界の儚き夢

1000年以上前の
僅か1月足らずの蜜月

たとえ人間だとて構わなかった
短命だと知っていても
それでも確かに愛していた



叶うならば戻りたい

お前を説得できていたら
世界は変わっていたのだろうか






～補足とか～
ええ、桜を見てて思いついたのです。
ひらひらと舞い降りた花びら。
落ちる前に取ろうとしても取れなくて…そのもどかしさを重ねてみました。
ちゃんとこれもSSに関連する…けれどあまりにも遠い物語。
いうなれば番外編みたいな？（＾＾；

桜の季節というふうには決めていなかったのだけど。
せっかくだから、繋げてみた(*ノノ)