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祭りにいかないか、と。
唐突に東雲はレイに声をかけた。
時刻は午後の九時。既に食事もすみ、互いに今日の出来事などを談笑しつつ、茶を飲んでいた頃合いである。
祭りですか、とレイが答えた。
確かに暦の上では既に春であり、仕官先であるカーシャでは実感出来ないが、メイマイでは既に花が咲き乱れ始めている。
常春の国というのは伊達ではないが、それでもメイマイでの祭りというのは東雲の印象と合わない。
レイがその言葉を出していいものかどうか迷って、首を傾げていると、それを感じ取った東雲が苦笑いを浮かべ
「何もメイマイの祭りという訳ではない。
この時期だと、丁度桃の節句が近い。
メイマイやカーシャでもある程度知られた風習のようだが……やはりここは、ムロマチのひな祭りを体験してもらおうかとおもってな」
その言語にレイは笑顔でいいですねぇ、と答えた。
レイは装飾店を、東雲は宿屋を経営する身である。
中々おいそれとは店を休めず、一日自由に動ける日というのは少ない。
自然、一緒に出かける事というのは、ちょっとした買い物程度で、旅行などというものは勿論したことがなかった。
そんな折の東雲の誘いは、レイにすこしばかり店を休ませるには十分魅力的だったのだろう。
その夜は互いに三日の日にどうやって予定を開けるかを考えつつ、笑い合って終わった。
レイが困ったことに気付いたのは、翌日のことだ。
店に来た客に、そっとムロマチの祭りの事を聞いてみると、ムロマチのキョウの、田舎の方ですこしばかり有名な祭りで、老若男女問わず、恋人や家族が見目麗しい着物に身を包み、花を楽しみながら騒ぐ祭りだという。
確かに、話を聞くだに楽しそうである。
ムロマチ人というのは、普段はどうしようもなく地味であるが、いざ祭りとなると騒ぎやすい傾向があった。
特にキョウの祭りは楽しくありながらも、雅さを忘れない。
「……困ったな」
レイが店のカウンターに頬杖をつきながら、呟いた。
東雲とどこか遠くに遊びにいくのは、考えて見れば付き合いだしてから初めての事であり、大変楽しみである。
だが、それがムロマチの祭りとなると
「浮いてしまわない、かな」
銀髪に、赤い瞳。
それはムロマチ人とは限りなく違う外見。
カーシャであれば気にもしないことだが、国外に開かれている街と違い、キョウの田舎の祭りともなると、ムロマチ人以外が参加していることは少ないだろう。
そうなると、典型的なムロマチ人である東雲の隣に居ることは、大層悪目立ちするかもしれない。
そんな考えが浮かんでくると、すこしばかりレイは憂鬱になっていく自分に気がついた。
その日の東雲は帰宅が大変遅かった。
ここのところ宿屋に泊まる客は少ないので、早上がりが多かったのだが、今日はどうしたことだろうとレイが尋ねる。
すると、東雲は照れたように笠を外し、首筋をかく。
「その、なんだ。……宿屋で好きに飲み食いする奴にな。頼んできたものがある」
東雲がよく背負っている風呂敷包みを解くと、そこには白を貴重とした、新品の着物があった。
「馴染みの商人に言われてな……女性に、何か贈り物をするなら、それを使う機会を作ってやれ、と」
ああ、と。ストンとレイが納得した顔がした。
要するに、東雲が珍しく祭りに誘ったのも、おそらくはこの着物をプレゼントしたいがためだったのだろう。
言葉を紡ぐ時はまっすぐに言うくせに、いざ行動に起こすとなるとこういった回り道をしたがるのが、東雲の悪い癖でもある。
だが、自然と憂鬱な気分が消え失せ、笑顔が浮かんできているのを、レイは自覚していた。
「……改めて、一緒に祭りに行かないか?」
差し出された着物を受け取りながら、答えるレイの顔は、満面の笑みだった。
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