聖夜に降る雪

朝、雷を伴って降り出した雨は、昼ごろには霙になり、霰になり、そして雪に変わった。

暗くなるころには完全な粉雪。
軽い雪はちょっとした風にすら流されて、あちこちに白い花を咲かせるから、傘を差しても全身雪まみれになってしまう。
道にはもうだいぶ積もって、歩くたびに、ぎゅむ、ぎゅむ、と音を立てる。
そんなことすらも楽しくて……思わず笑みがこぼれる。

買ってきたばかりの荷物を抱えなおして、空を見上げる。
闇の中から、細かい白い塊がふわふわといくつもいくつも落ちてくる。

街を見る。
白い町並みは、闇に浮かび上がるようだ。
窓の灯りが凍える夜に温かみを添える。

今夜はクリスマスイブ。
雪はまるで、天からの贈り物のよう。

知らず笑みが深まった。

雪は好きだ。
柔らかくて、ふわふわと舞い落ちる雪。

なんて綺麗なんだろう。

ずっと見ていても飽きない。

際限がないように降り続く小さなそれらは、どんどん、どんどん降り積もる。
全てが白く染まっていく。
ゆっくりと、ゆっくりと。
白く変わる世界を見続けた。



どれだけ見つめ続けていただろうか。
わずかにずれかけていた荷物に気付き、持ち直す。

店頭で見て一目ぼれしたそれは、美しい茶器。
割れ物だから、そっと…壊れないように、そっと抱えて。
大切な人のもとへと届けるための、特別な品。

「早く会いたいな」

呟きすら白く、闇を染めた。