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君が寂しい夜には

……深夜……

不意にレイは目が覚めた。
ベッドの中、半身を起こし、両手で顔を覆う。

また、あの夢を見た。

溜息をつく。
深い、深い息。
一緒に胸の中の澱も出て行ってくれればいいのにと思う。
けれどそれは叶わない。
その澱がどうやって発生するのかもわからないのだ。
発生も正体も不明の澱。そんなものの排出方法など…わかるわけがない。

あの夢を見た後はいつもそうだ。
目が覚めた瞬間に全て忘れる、なのに、胸の中に澱だけが残る…夢。

こんな夜はどうしたらいいかわからない。
一人きりで膝を抱え、溜息だけを大量発生させながら朝を迎える。
こんな遅い時間では同居人も起きてはいないだろう。
リュークはイヌオウの所に預けっぱなしだ。
誰かと話でもできれば気がまぎれるかもしれないのに。

…………………。

レイは不意にベッドから降りた。
厚手の上下に着替え、セーターを重ね、コートを羽織り、さらに手袋とマフラーで固める。
そのまま外へ出て、冷たい風の中を歩き出す。
湖に向かって。

目的地に着くとその場に座り込んだ。
そして空を眺める。
輝く細い月と、満天の星。
農地ばかりのこのあたりは、夜になれば寝静まる。
明かりの消えた大地は星の輝きを邪魔しない。
その中で、細い三日月は控えめに存在を主張している。
月は何よりも輝く星だ。
この大地に一番近い星…。

ふいに涙が溢れた。
なんだろう、月を見ていると悲しくなる。

悲しい?
いや、違うかもしれない。
あまりにも複雑な感情。
色んな思いが重なり、絡まりあっている。

一人きりが辛かった。
誰かにそばにいて欲しい。けれど今、現実にレイは一人きりでしかない。

心が重い。

まるでその重さにひきづられるかのように、レイは崩れるように横たわる。
…さすがに、外は寒いな…。
そう思っても、帰る気にはなれなかった。
ここには水がある。今はせめて、水のそばにいたい。

一人きりは嫌だ…。
そっと目を閉じて、さらに強く水の気配を感じ取ろうとしたとき。

「ここで寝ちゃダメだよ」

唐突に声がかけられた。
聞きなれた声。

「リューク!?」

驚いた。
跳ね起きると、確かにリュークが自分の横にいた。
いつの間に…?

「風邪ひいちゃうよ。ダメだよ」
「あ…いや、寝はしない…けど…」

そこにいたのは確かにリュークだった。

「どうして…」

ここにいるのか。
肝心な部分の抜けた言葉は、けれどちゃんと相手に伝わったらしい。

「胸騒ぎがしたからね。ちょっと呼ばれた気もしたし…探しに来た」

言われたときの感情は、言葉にできなかった。
レイにできたことは、ただリュークを抱きしめることだった。

「レイ。…レイ。ね、聞いて? レイが寂しいときには私を呼んで。どんなに離れていても来るから。声が届けば来れるから」
「……声が届く?」
「そう。心で呼んでくれればいいの。そうしたら私に届くから」
「心で…」

思うだけで、呼べるというのだろうか。
来て欲しいと望むだけで。

「呼べるから。レイならできるから…」

そういってリュークは、抱きしめる私に顔を摺り寄せてきた。
身動きの取れない彼女にできる、精一杯の愛情表現。

「だから今は帰ろう。…今夜はちょっと冷えすぎるよ」

確かに寒い。
天気がいい分、周囲の熱は空に逃げてしまっている。

「…うん、帰ろうか」

傍に居てくれる。
それがレイに安心をもたらした。
もうここにいる必要はない。
わからないことは沢山あったけど、今は何も考えたくない。
レイは立ち上がり、リュークと共に岐路に着いた。



レイの横を歩きながら、そっとリュークはレイを見上げる。
そろそろレイは知ったほうがいいのかもしれない。
自分だけではなく…もっと様々なものを呼べるということを。
それがレイの、核となった女性から受け継いだ能力だということを。
……自分の正体はまだ、言えないけれど…。
少しの後ろめたさと共に考える。
まだ言えない。
それは『彼』との約束。
『彼』の許可がなければ、このままケルロンのふりをし続けなければならない。
後ろめたいが、仕方がない。真の主はレイではなく、『彼』なのだ…。
けれど、それでも。
寂しいときには呼んで欲しいと、願う心はたしかにリュークのものだった。

君が寂しいときには、私を呼んで。
声が届けば駆けつける。
呼ばれた次の瞬間には、私は君の横にいるから…。

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プロフィール
名前:レイ・フェイク
誕生日:08/12/01
HP:水夢 -水の見る夢-
足跡:
42 09 21 06 23 41 42 39 24 17 20 40 42
-NPC-
うさぎ:ライラ、リナ、ルナ、レナ、ロビン
保護者:ロスト
家族募集してみる。
活動範囲が被る人優先。
即決はあまりないけど、まずは気軽に声かけて下さいね。
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