[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
その湖面。
つま先がギリギリ触れぬ位置に、静かに少女が浮かんでいた。
少女は深く息を吸うと、伸ばしたままの手を軽く横に広げる。
「水よ…我が名に従い、我が祈りに応えよ…我が名は――――――」
少女が名乗ると、彼女の左右から2本の水が蛇のように伸びた。
水の蛇をそれぞれの手で制し、振り上げるように顔の前で手を交差させる。
蛇は彼女を中心として渦を巻く。
激しい動きに散った水滴が、月光を映して煌いた。
しかし……。
月明かり
舞い散る薄紅の花びらは
手向けのように降り積もる
春に降る雪のように
それはまるで
この世界の全てを
己の色で染め上げるように
舞い散る花吹雪
伸ばしたこの手は
お前の手に届かなかった
深い森の奥。
人形と見なされた少女が抱える死の可能性を指摘し、王は笑って言った。
「私にその人形をよこさないか」
と。
それぞれがいつもと違う髪形になっていたのだ。
きっかけは、ワーキャットが美しき魔人に捕まったこと。
それが流れ流れて、その場の全員が髪型を変更されるという事態に陥った。
が。
それを心から楽しんでいたのがレイである。
レイは今、髪をふたつに分けられ、それぞれ頭の上で丸められている。
レイから見れば、それはちょうど熊のぬいぐるみの耳のような形に見えた。
「熊さん耳♪」
帰宅後も飽きずに鏡の前でクルクルと回っては、耳のような髪型を楽しんでいる。
リュークが呆れて溜息をついた。
そこは美しい森だった。
雄雄しい大樹が根を張り、様々な花が咲き乱れ、果実はたわわに稔り、香草が香りを振りまく。
様々な植物が同時に存在しながらも、調和を崩さない森。
この森が、自分を呼び出した相手のものでなければ…。
訪れる度にそんな感情が生まれる。
とても素晴らしい森。
けれど所有者故に、訪れたいとは思わせない森。
進むほどに気分が沈んでいく。
これ以上はないというくらいに不機嫌だった。
理由は簡単だ。
誰よりも会いたくない相手に呼び出されたためだ。
「まったく、何の因果だか…。…ちくしょう」
毒づいて、ふわりと飛び立つ。
望まない会合へ向かうために。
どんなに嫌な相手だとしても、会わなくてはいけない。
今の彼には、責任という重く頑丈な鎖が絡まっている。
自分の感情のみで行動を決める立場ではない。
「本当に、なんでこんな…」
青く済んだ空に身をゆだねながら、意識は全てを決定付けた過去へと向かった。
今日の分の報告を石に封じ、リュークはため息をつく。
報告内容は簡単なものだ。
会議室でどんな行動をしたか。
家族との会話。
勤務状況。
畑の作物の育ち具合。
経験値の取得結果…。
そんな毎日の、ごく当たり前の行動が石に詰め込まれている。
けれど、それは自分の情報ではない。
他人の情報を収集し、それをリュークは別の存在へ渡す。
正直、あまり楽しい仕事ではない。
(そろそろ来る頃だろうか)
用意をしようと体を起こしたとき、それが事実であることを感覚が教える。
(ああ、もうだいぶ近いようだ…急がなくては)
すぐに人型を取り、予定された小屋を整え、湯を沸かす。
最近はこれが日課になっていた。
最初の頃はなぜ主が茶などを好むのかわからなかった。
彼らにはその習慣がない。
彼らの体は、そういうことに適した作りではなかった。
喉が渇けば清水を飲めばいい。
甘いものが欲しくなれば果実を食せばいい。
何かを自分で作るということはしないし、そういう概念もない。
茶や菓子を用意するには、わざわざ人型を取る必要がある。
なぜこんなめんどくさいことを…。いつも彼はそう思っていた。
「つまり、召喚というのは、相手にどれだけ興味と好意を持たせるかによって決まるのよ」
リュークが絨毯の上にちょこんと座りながらレイに説明する。
「レイは正直言って、ドがつくほどの素人よね」
「う゛…そ、そうね…」
「落ち込んでる場合じゃないの。現状を正しく理解することが大事なの」
「はいです…」
「よし。……基本的にね。いまのレイに呼べる相手はいないでしょうね」
リュークはきっぱりと現実を突きつける。
けれどそれは当然のこと。
召喚という能力が自分にあることすら知らなかったレイに、いきなり何かを呼び出せるわけもない。
……深夜……
不意にレイは目が覚めた。
ベッドの中、半身を起こし、両手で顔を覆う。
また、あの夢を見た。
溜息をつく。
深い、深い息。
一緒に胸の中の澱も出て行ってくれればいいのにと思う。
けれどそれは叶わない。
その澱がどうやって発生するのかもわからないのだ。
発生も正体も不明の澱。そんなものの排出方法など…わかるわけがない。
あの夢を見た後はいつもそうだ。
目が覚めた瞬間に全て忘れる、なのに、胸の中に澱だけが残る…夢。
なんとなく手持ち無沙汰だったので、湖畔の散歩に出かけた。
自然に満ち溢れ、汚染とは無縁の、水の気配に満ちた気持ちの良い場所。
やはりここを選んで正解だったと思う。
作物は日々その品質を良くしているように思える。
引っ越して2日目だというのに、すでに品質は6-。
この分ならすぐに最高品質まで上がるだろう。
きっと収穫数も期待できるんじゃないかな。
湖の淵に座り、ぼんやりと水に映る月を眺める。
あたりに漂う霧が風景をさらに幻想的に見せていた。
なんて綺麗なところなんだろう。
どれだけそうしていただろうか。
ゆっくりと湖上の霧が集まってきた。
微笑んで手を伸ばすと、そっと手が上向けられ、そこに霧が溜まり水となった。
空気中に漂っていたとは思えない、綺麗に澄んだ水。
「飲めってことかな?」
問うと、答えるように残りの霧が寄り添う。
銀の髪に水滴が付着し、月の光を浴びて宝石のように煌めく。
感謝を込めてもう一度微笑を浮かべ、手のひらに溜まった水に口をつけた。
甘く、まろやかな極上の水。
「ありがとう」
思いがけない歓迎がとても嬉しかった。
長い銀の髪を周囲に散らしながら、繭の中に膝を抱えた姿勢で浮かんでいる。
なんの不安もない。
硬い氷も、決して自分を傷つけないということを知っている。
自分が氷と…いや、その基本となる水と同じ属性をもつものだということ。
一般的に水の精霊と呼ばれる存在であることを、既に私は知っていた。
それはまだ私がこの世に生まれ出る前。
極寒の大地の底。氷ばかりの空間。
私はそこで造られ…そこで生まれるために眠り続けていた。
長い眠りの期間。
けれどやがてその眠りも醒めときが来る。
これはその直前の出来事。
確かに見た夢。
けれど…記憶から消え去った夢…。
白いコートで雪原を散歩する。
ここの水は、今は静かに眠っている。
とても穏やかだ。
振り仰げば、やわらかい光を投げかける太陽。
その、光。
私はそれに手を伸ばす。
確かにそこにあるのに…なのに。
掴めない。
触れて…暖かいのに。
捕まえられては、くれない。
するりとかわされる様に。
握ったこの手の中には…いてくれない。
会ったのはただ一度だけ…ほんの少しだけしか傍にいてくれなかった、私の創造主。
交わした言葉も少なかった。
『彼』は私に名前をくれた。
そして、紅玉の首飾りを、私の首にかけてくれた。
決して無くしてはいけないよ、と言って。
生まれたばかりの私は、頭がぼうっとして…状況を考えることができなかった。
今なら色々聞けるのに、その時はただ頷くしかできなかったのが、悔しい。
そのときのことを、思い出す。
私は本当に何もできないままだった…。
03 | 2025/04 | 05 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | ||
6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 |
20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 |
27 | 28 | 29 | 30 |
リンクはHPのリンクページに
貴方は 人目のお客様
誕生日:08/12/01
HP:水夢 -水の見る夢-
足跡:
42 09 21 06 23 41 42 39 24 17 20 40 42
-NPC-
うさぎ:ライラ、リナ、ルナ、レナ、ロビン
保護者:ロスト
家族募集してみる。
活動範囲が被る人優先。
即決はあまりないけど、まずは気軽に声かけて下さいね。